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前回のコラムでは老舗ブランドColemanとIglooの誕生秘話を紹介しましたが、そもそも「クーラーボックス」という製品自体は、いつどこで生まれたのでしょうか。実はその始まりは、19世紀初頭の「バターを運ぶための箱」にまでさかのぼります。今回は特定のブランドの歴史ではなく、クーラーボックスという製品カテゴリーそのものの起源をたどってみます。
※本記事は複数の情報源を比較・分析して紹介するコラムです。

クーラーボックスの起源コラム、リード画像

目次

  1. バターを運ぶための木箱だった?19世紀の「アイスボックス」誕生
  2. 1953年、「ポータブルクーラー」という発明の特許
  3. 金属からプラスチックへ、1950〜60年代の素材革命
  4. 日本での普及は釣り業界から
  5. まとめ

1. バターを運ぶための木箱だった?19世紀の「アイスボックス」誕生

クーラーボックスの原型とされているのが、1802年(特許取得は1803年とされる)にアメリカ・メリーランド州の農場経営者トーマス・ムーア氏が考案した「リフリジラトリー」です。杉材の楕円形の桶に氷を詰め、外側をウサギの毛皮や粗い毛織物で覆って断熱するという構造で、バター22ポンド分を市場まで運ぶために使われました。今のクーラーボックスとは似ても似つかない見た目ですが、「氷で保冷し、断熱材で覆う」という基本原理はすでにこの時点で確立されていたことになります。

19世紀にはこの考え方がさらに発展し、「アイスボックス」と呼ばれる木製キャビネットが各家庭に普及しました。1827年に商業用の製氷カッターが発明されると、天然氷の切り出しが効率化されて価格が下がり、アイスボックスが一気に一般家庭にも広まる後押しとなりました。

  • 1802年のトーマス・ムーアの「リフリジラトリー」が、氷+断熱材という基本構造の原型とされる
  • 1827年の製氷カッター発明が、家庭用アイスボックス普及の転機になった

アイスボックス誕生章の後、ポータブルクーラー特許章の前の挿絵

2. 1953年、「ポータブルクーラー」という発明の特許

家庭用のアイスボックスから、持ち運べる「ポータブルクーラー」への転換点となったのが1950年代です。1928年にはコカ・コーラ社が金属加工業者に専用クーラーの製造を依頼し、上部にソーダ用の氷室、下部に空き瓶ラックを備えた業務用クーラーが登場しました。1947年にはIglooが労働者向けの亜鉛メッキ鋼鉄製バケツ型クーラーを開発し、テキサスの油田地帯で人気を集めています。

そして1951〜1953年、リチャード・C・ララミー氏が「食品等を保存・冷却するための携帯用アイスチェスト」の特許を出願・取得しました。これが、現在私たちが使っている「ポータブルクーラー」という製品カテゴリーの実質的な誕生とされています。同じ時期、Queen Stove Works社がハンドルと栓抜き付きの「Kampkold」を商品化し、1952年にはオーストラリアのMalleys社も亜鉛メッキ鉄とコルクを組み合わせた「Auto Box」を発売するなど、世界各地でほぼ同時多発的に「持ち運べる保冷箱」の開発が進んでいました。

  • 1953年のララミー氏の特許取得が「ポータブルクーラー」という製品カテゴリーの実質的な誕生とされる
  • 同時期に複数のメーカーが独立して類似の製品を開発しており、世界的に同時多発的な発明だった

3. 金属からプラスチックへ、1950〜60年代の素材革命

1954年、Colemanは前述のQueen Stove Worksを買収し、「クーラー」ブランドとしてアイスチェストの製造に参入します。当初は金属製が主流でしたが、1957年にColemanは樹脂製へと素材を転換し、発泡スチロール製のアイスチェストを導入しました。1962年にはIglooもピクニックバスケット風のカラフルなプラスチック製クーラーへと舵を切っています。

金属からプラスチックへの転換は、軽量化とコストダウンの両方を実現した大きな技術革新でした。1970年代に入るとビニール・ナイロン素材のソフトタイプクーラーも登場し、軽さやお手入れのしやすさが評価されて普及が進みます。1992年にはIglooがキャスターとハンドルを追加したモデルを発売し、大容量モデルでも持ち運びやすくなりました。

  • 金属製→プラスチック製→ソフト素材という順で軽量化が進んできた歴史がある

現在の高機能帯クーラーボックスで紹介しているキャスター付きモデルも、こうした1990年代の技術革新の延長線上にあります。

素材革命章の後、日本での普及章の前の挿絵

4. 日本での普及は釣り業界から

ここまで紹介してきたのはアメリカでの歴史ですが、日本での普及の経緯は少し異なります。実は「クーラーボックス」という呼び方自体が和製英語で、英語圏では単に「cooler」と呼ばれています。

日本でクーラーボックスが広まったのは1980年代のことで、当初は釣り業界で「釣った魚を保管・運搬する道具」として使われていました。その後、用途はキャンプやピクニックなどのアウトドアレジャー全般へと拡大し、現在のような食品・飲料の運搬用途が一般的になっていきました。アメリカでの発明から日本での本格普及まで、実に約30年のタイムラグがあったことになります。

  • 「クーラーボックス」は和製英語、英語圏では単に「cooler」と呼ぶ
  • 日本での普及は1980年代、釣り業界での利用が先行していた

日本での普及章の後、まとめ章の前の挿絵

5. まとめ

クーラーボックスの歴史は、1802年のトーマス・ムーアによる「バター運び用の木箱」から始まり、19世紀のアイスボックス、1953年のポータブルクーラー特許、そして1950〜60年代の金属からプラスチックへの素材革命を経て、現在の形になりました。日本での普及は1980年代からと比較的新しく、釣り業界での利用が先駆けだったという点も意外な事実です。次にクーラーボックスを選ぶときは、こうした約200年の歴史の積み重ねの上に今の製品があることを思い出してみてください。

老舗ブランドColeman・Iglooそれぞれの誕生秘話は、こちらのコラムでも詳しく紹介しています。

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